『城塞』(安部公房)、新国立劇場小劇場.

2017/04/21、新国立劇場小劇場で『城塞』(安部公房)を観ました。演出は上村聡史、キャストは、山西惇、椿真由美、辻萬長、たかお鷹、松岡依都美。脚本、演出、演技の三拍子揃った素晴らしい上演に久しぶりに出会いました。客席の反応は些か冷たく感じましたが、僕は大感激でした。まず、何としっかりした脚本でしょう!安部公房の構成、言葉、思想は、人間の精神のしこりを描き出すとともに、それが社会の雰囲気の膠着を描き出しているようにも思えます。精神のしなやかさを失った人間が作る社会もまた停滞するのです。それが現代日本の実情を正確に反映しているように思えました。その停滞を打破できるのは、若い踊り子に象徴されるような肉体の強かさだけでしょう。膠着した精神のもがきー主題が、構成の妙と言葉の的確さを伴って見事に表現されていました。その功績は、まずは俳優たちの好演によるところが大きいでしょう。特に、辻萬長の傲慢利己的な父親の正気の姿と狂気の演技は観客を唸らせるものがあります。それと対峙する松岡が演ずる踊り子の肉体の存在感、椿の俗物的婦人像も素晴らしいと思いました。それらを逼塞した精神とも社会ともとれる舞台に仕上げた演出も大したものです。安部公房の芝居は基本的に都会的な冷たさを持っていますが、この舞台がどこか温かさを感じさせたのは、丁寧な芝居作りによる観客と舞台の一体感のなせる技でしょう。但し、この芝居が書かれた1962年当時に唱えられた肉体の復権は、学生運動の終焉という意味で一度挫折した故に、今日はより一層難しく、私はこの戯曲に希望を感じませんでした。それがそのような過去を経験している私のような世代だけのことなのかどうかは分かりません。良い芝居を見せて貰いました。有難う。
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